06-29-12

デミアン・ハーストへの10の質問

“10 Questions For Damien Hirst″に日本語字幕を付けました。
翻訳は辻憲行 (twitterID=nori_1999)
芸術係数(http://gjks.org)
元の動画はこちら

〔字幕〕
ベリンダ・ロスコム:こんにちは、ベリンダ・ロスコムです。
タイム誌の編集者です。

デミアン・ハースト氏は、世界で最も成功し、著名で、そして裕福な
アーティストの一人です。
ハースト氏は、世界各地に点在する十一箇所のガゴシアン・ギャラリーを全て使い、
彼のスポットペインティングだけの展覧会を開催中です。
今日はその展覧会に関連した十の質問に答えていただこうと思います。

ハーストさん、ようこそ。

デミアン・ハースト:どうも。

ロスコム:世界各地の十一箇所のギャラリーで、
あなたのスポットペインティングだけが展示されています。
なぜこのような展覧会を思いついたのですか?

ハースト:ラリー(・ガゴシアン)のギャラリーには、
各地のギャラリーで展示中の、それぞれのアーティストの名前が壁に
プリントされているんだ。
それを見たとき考えた、世界中のアーティストの中で俺だけだな、
全部のギャラリーを一人の作品で埋められるのは、とね。
要するに誇大妄想狂の発想だよ。

ロスコム:あなた自身が描いたスポットペインティング
は五枚だけだったかしら?

ハースト:この展覧会に出品されているものの中では
だいたい二十五点くらいだ。

ロスコム:あら、二十五枚も!
作品を外注するときにはどんな風にやるの?
作品制作の外部委託は他の人もやってるけど、
あなたとは違うやり方よね。
例えばアメリカの企業がやるように、
スリランカの人に技術訓練したりするの?

ハースト:アーティストなら訓練さえすれば誰でも
作品を作れると考えるべきだ。
作品制作には、多くの人々の才能が必要だからだ。
写真を写実的に描いた絵画作品の場合も同様だ。
俺は自分の能力だけですごい絵が描ける奴を雇わない。
自分の才能だけを頼り、誰の協力も必要とせずに描いてしまう。
だが、俺がやってることは訓練次第で誰でも
できるんだ、と考える方がいいんだよ。

ロスコム:つまりあなたが雇うのは能なしということなのかしら?

ハースト:絵筆を握ればいいんだ。基本的な技術さえ
あれば、それで十分ということだよ。

ロスコム:さっき警備の人から聞かれたのよ、
それぞれの丸は何を意味しているのかって。
一緒に考えてあげましょうか?

ハースト:そうだな…赤は愛を、白は純粋さを、黒は死を、
青は憂鬱を、緑は嫉妬を意味しているよ。

ロスコム:真面目に言ってるの?それともふざけてるのかしら?

ハースト:そもそもアートは…
俺が作っている作品は、それが人にとってどんな意味を持つか、
十分に説明できるようなものじゃないんだ。
おそらく人間は混乱を、あるいは世界を秩序
付けようと欲する生き物なんだろう。
だから我々はグリッドを好むんだろう。
だけど人間がグリッドに収めようとするものが
そこに収まることはめったにないんだ。
人間っていうのはそういう事を好んでやろうとするんだよ。

ロスコム:同感だわ。
スポットペインティングを除くあなたの作品の多くは、
腐敗、死、堕落といったテーマを扱っていますね。
それはどういう理由からなのかしら?

ハースト:俺はいつも出来事の両面を取り上げる。
バタフライ・ペインティングを作ったとき、
感傷的に受け止められすぎないよう心がけた。
だから、フライ(蝿)・ペインティングを制作した。
愛は素晴らしいものだが、こうしている間にも、アフリカでは多くの
子供たちが殺されている。それが世界だろ?
圧倒的な矛盾であふれているんだ。
俺はそんな世界を反映する作品を作りたいのさ。

ロスコム:あなたは、世間から忘れられ、無視されるのが
一番恐ろしいと言っていたわね、そんなことありそうもないけど…。
実際あなたの作品は大きな議論を呼ぶことが多いわね。
例えばあなたの頭蓋骨の彫刻…神の愛?だったかしら。

ハースト:そうだ。

ロスコム:頭蓋骨にプラチナとダイアモンドが
散りばめられてるのよね。
そういう作品にはある意味芝居がかった
ところがあるように感じるの。
それで何人かから、そういうやり方が、ある種の
TV番組を連想させると聞かされたの。
そうね、例えばピンプ・マイ・ライドや
ケーキ番長みたいな番組、英国にもあるわよね

ハースト:俺はピンプ・マイ・ライド好きだけどな。

ロスコム:そういう番組では色々な出演者たちが、
驚くような創造性を見せてくれる。
彼らとあなたの創作との間に区別はあるのかしら?

ハースト:なんであれ、超良くできたものがアートだ。
俺は神を信じない。俺にとってはアートが宗教なんだ。
俺はいつも1+1が3になるような数学的奇跡について考えてる。
ダイアモンド・スカルをパクる奴もいるだろうし、
1+1を2にする奴もいるだろうが、それじゃ足りないんだ。
1+1が1のままだったら未来はない。スタジオに引きこもるしかない。
ダイアモンド・スカルで言えば…アーティストは、
身の回りにあるものごとから発想する。
ダイアモンド・スカルはブームになっていて、
大勢が大枚はたいて買っていってるよ。
そんな大金ははガキの頃の俺には見果てぬ夢だった。
今の状況はイカれてるよ。
俺にはダイアモンド・スカルを作ることしか思いつかなかった。
そいつは俺をとんでもなく怯えさせるんだ。
俺は囚われの王様の気分だった。
作品を作るのに百万ポンド以上使うんだ。
言いたくはないが、大金を手にすると創造することが困難になる。

ロスコム:それについて聞きたかったのよ。

ハースト:おかしなもんさ。
アーティストはヴァン・ゴッホのように
貧しくあれ、っていう考えは気に入らない。
金は何かを可能にするための鍵のようなもので、
そのために制作するようなものじゃない。
金は愛と同じくらい面倒なものだと思ってる。

ロスコム:それが控えめに見ても三百万ドルの値打ちの
ある男性からの言葉かしら?

ハースト:どうかな。

ロスコム:三百万ポンドかしら…
自分ではわからないものかしら?

ハースト:価値は変わるからな。
まあいいさ。
会計士と俺の子供のことについて最近話したんだ。
彼は「子供のことは心配いらないな」と言った。
貧しい環境で生まれたら心配事は尽きないだろう。
どうにもできないことだよ。

ロスコム:私にも一つ包んでくださらない?

ハースト:三百万ドルだぜ。

ロスコム:ポンドじゃないの?

ハースト:ポンドかもな。ポンド、ドルどっちかな。
ポンドとドルを入れ替えるのもいいな。

ロスコム:そうね。

ハースト:今じゃどっちも変わらんがね。
大特売会で買えるかどうかだな、だろ?

ロスコム:ありがとうございました、ハーストさん

ハースト:どうも。

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