02-06-13

〔レポート〕芸術係数特別講義:梅沢和木「○と□の画像コア(絵画論)」

 
開催からしばらく時間が経ってしまいましたが、昨年(2012年)末、12月29日に開催された最初の芸術係数特別講義:梅沢和木「○と□の画像コア(絵画論)」の様子などを報告したいと思います。
会場でもお知らせした通り、このトークの内容は編集の上、時間内に収まりきらなかった論点も盛り込んで、冊子として発行する予定です。2月中の発行を目指して現在鋭意制作中ですので、準備が整い次第告知します。

ということでこのエントリではトークの詳しい内容は置いておいて、当日の様子や直接,間接的に見聞きした来場者の感想などをお伝えできたらと思っています

トークの会場になったのは、木場にあるEARTH+ GALLERY(アースプラスギャラリー)です。場所は東西線の木場駅から歩いて10分弱、東京都現代美術館からも同じくらいの距離です。まだオープンして間もないギャラリーですが、なかなか雰囲気の良い空間です。スペースとしては入り口から入って奥に進むと左手に天井の高いホワイトキューブの空間があり、右手にはバーカウンター、そしてロフトスペースにはソファなどが設置されてラウンジのような空間になっています。トークのときにもそこでくつろぎながら聞いている参加者の皆さんもいらっしゃいました。

当日の来場者数は50名で,予想以上にたくさんの皆さんにご来場いただきました。ご挨拶できなかった皆様も多かったので、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
ご来場いただいた皆様の顔ぶれを見ると、普段の芸術係数に参加いただいている方,梅沢さんのお知り合いや仕事関係の皆さん、学生、アート関係者(若干名)という感じでした。あと圧倒的に男性が多い(8:2くらいだったようです)。

トークの前半では、梅沢氏のこれまでの作品をスライドショーで紹介しながら、作家本人による解説していただきました。梅沢氏の実質的なデビューは2009年で、キャリア的には4年弱と非常に短いわけですが、短期間に数多くのプロジェクトに参加していることもあり、作品の変遷を時系列に,作家のコメントともに振り返る機会はこれまでなく、参加者の皆様にも好評でした。梅沢氏の参加プロジェクトの多さは日本の若い作家の中では異例のもので、そのプロジェクトの多くはカオス*ラウンジによるものなのですが、若い作家たちに多くの展示機会を提供するというのは、コンセプトやインスタレーションの面白さ、革新性とはまた別の、カオス*ラウンジの良さだと思います。
 

Photograph by Yuichi Kobayashi

Photograph by Yuichi Kobayashi

Photograph by Tadashi Takenaga

Photograph by Tadashi Takenaga

会場の座席数はちょうど50席でしたので、ほぼ満席になりました。
前半の梅沢氏の作品紹介を終えて、いったん休憩時間をとりました。みなさん歓談したり、梅ラボのマルティプル作品を手に取って眺めたりしていました。人に隠れて見えませんが、写真の左奥にバーカウンターがあります。
 

Photograph by Yuichi Kobayashi

Photograph by Yuichi Kobayashi

後半は、私から梅沢さんの作品の美術史や美術批評との接点になりそうなトピックに関してディスカッションする予定で、今回は「フラットベッド」と「グリッド」という二つのトピックを用意しました。「フラットベッド」はアメリカ人美術批評家のレオ・スタインバーグの「他の批評基準」(1972)という論考で取り上げられた概念で、絵画表面の平面性をとらえなおし、ネオダダやコンセプチュアル・アートひいてはネット・アートのような表現をも予見していたともいえる言葉です。そして「グリッド」はアメリカ人美術批評家のロザリンド・クラウスの1978年の論考のタイトルで、グリーンバーグ的な絵画形式の平面性の追求を、様々な矛盾を抑圧するための概念装置として批判したものです。両者とも、グリーンバーグのフォーマリズム批評によるドグマ的な平面性(フラットネス)の追求に対する批判であり、絵画の新しい可能性を開く試みでした。

当日は進行役の私が時間配分を間違えてしまい、二つのうち「フラットベッド」についてしか話題に上げる事ができませんでしたが、冊子では「グリッド」についての議論も取り上げたいと思います。
 

Photograph by Yuichi Kobayashi

Photograph by Yuichi Kobayashi

トークの冒頭でも少し触れましたが、この芸術係数特別講義の目的の一つは「ポスト・スーパーフラット」について考え、発言していく事にあります。それは世代論的な乗り越えを意図しているのでも、スーパーフラットを単純に過去のものとして扱う事でもありません。私たちの意図は、スーパーフラットを無視し続けて来た日本のアートシーンへの批判も込め、スーパーフラットに正面から応答していくことです。村上さん自身が指摘するように、スーパーフラットがアメリカの傀儡国家としての日本の社会構造そのものであるなら、その構造自体が変わらない限り「ポスト・スーパーフラット」を語る事はフィクションに過ぎないのかもしれません。しかし3.11以降、スーパーフラットが抑圧してきた様々な問題が私たちの目に明らかになっているのは確かで、その前提に立って未来について考え、語り、それを描き出す事が可能になっているのだと私たちは考えます。第二次大戦後、ホロコースト以後の芸術について語ったドイツの思想家の言葉をパラフレーズするなら、「3.11以降、スーパーフラットに言及することなく芸術を語ることは野蛮である」と言ってもいいでしょう。
 

Photograph by Tadashi Takenaga

Photograph by Tadashi Takenaga

芸術係数特別講義は、ゲストと一緒に作り上げているイベントです。広報や運営に関しても具体的に協力していますし、入場料に関しても平等にシェアしています。また、イベントの記録写真は日大芸術学部写真学科の小林雄一さんと竹永理さんに撮影していただいていて、映像記録と設営・受付などでたくさんのボランティアの協力で運営されています。芸術係数ではこうした運営モデルでこれからもトークや展覧会などの企画を運営していく計画です。何らかの形でご協力いただける方は、Facebookやtwitterでご連絡いただければ嬉しいです。

*トーク終了後には交流会が行われ、こちらにもたくさんの方がご参加くださいました。交流会ではvisualog様からご提供いただいた、梅沢さんのアートワークによるポスタープレゼントじゃんけん大会も開催されて大いに盛り上がりました!

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